石井 萌 卒業論文要旨
本論文は、二酸化炭素回収・貯留技術の社会実装に向け必要不可欠である社会的受容を獲得するための論考である。第一章において二酸化炭素回収・貯留技術の概要や現状、その必要性をまとめ、第二章では過去に起きた/今後起こりうる反対論を紹介している。続く第三章では前二章の内容から二酸化炭素回収・貯留技術の社会的受容をNIMBY(Not in my back yard)問題の一環として位置付け、先行研究を基に二酸化炭素回収・貯留技術の社会受容に至るまでのモデルを作成した。第四章では日本国内における地熱発電の受容成功例を当該のモデルに代入し、その成功要因を「リスクに対する適切な認知」「手続き的公正さの保障」「個人的便益の提供」の3つに分類した。最終章では二酸化炭素回収・貯留技術の実用化にあたり、これらの要因を満たすような施策として①早期からのリスク・コミュニケーションの実施、②住民の意思を反映した/域外多数者に対する認知度向上を目的とした広報活動の実施、③専門家による情報提供、④中立的な第三者の介入、⑤経済効果や雇用の創出、⑥国からの経済的支援、⑦モニタリングデータの提供を提案し、二酸化炭素回収・貯留技術の社会的受容獲得に向けた総合的なフレームワークとしてまとめている。