伊豆野慧 卒業レポート要旨
日本の宇宙開発事業は、限られた予算と人員の中での研究開発に支えられている。一般社会にとっては縁の無い、そうした研究開発の意義と成果を、少しでも広める役割を果たすのが、マスメディアである。
このレポートの主題は、近年の日本の宇宙開発に対して、マスメディアがどのような報道を行ってきたを調査し、その報道の傾向を示す事である。伝えられる情報が限られる中での、はっきりとした傾向を見出すために、媒体として新聞記事を取り上げた。筆者は大学図書館に収蔵されている、複数の大手新聞社の縮刷版を調査し、特定の時期における新聞記事を収集した。そして、その見出しや伝えられる内容、記事の数を明らかにし、それぞれの時期における宇宙開発を取り巻く環境も考慮しつつ、考察を行った。その結果、対象となる時期に「宇宙開発」がどのような意義付けをなされていたかによって、記事の傾向が左右されることが分かった。報道の変遷は、長期的に見て宇宙開発事業が「官から民へ」という一大潮流の中にあることと関係しており、また日本にとって事業の重心が「官業から民業へ」「日本国内から国境を越えた競争へ」と拡大していることも影響を及ぼしている。