「準天頂衛星システムの国家戦略 ―スマートパワーの獲得に向けて―」

丸山拓馬 卒業論文要旨

日本の宇宙開発利用は、技術開発中心から利用中心へと大きな転換期を迎えている。特に「日本版GPS」と呼ばれる準天頂衛星システムは、この転換期において目玉とされている事業である。準天頂衛星システムの戦略的な意義について分析し、日本の宇宙開発利用の飛躍のためにいかに活用すれば「スマートパワー」として働くかについて、提言することが本論文の目的である。

本論文では、ジョセフ・ナイの提唱する「スマートパワー」概念を用い、各国の宇宙開発利用史の分析を通じてこれからの宇宙開発利用に求められる要素を検討した上で、日本の宇宙開発利用の問題解決の糸口を探った。続いて、日本を含め、近年宇宙先進国で整備が進む衛星測位システムの概要と利用法、各国の開発状況について触れ、そして日本がこれからの宇宙開発利用で求められる要素を満たしていくために、準天頂衛星システムをいかに「スマートパワー」として活用するかについての提言を行った。その結果、これからの宇宙開発利用には「宇宙外交を通じた社会インフラの途上国への提供」という要素が重要であり、その要素を満たした準天頂衛星システムを他のインフラ事業分野とパッケージングして海外に提供することは、「スマートパワー」の資源となる国家戦略になり得るという結論に至った。

2013-maruyama