「利用目的から見るAR(拡張現実)の未来」

池田浩平 卒業論文要旨

この論文は、スマートフォンやタブレットが一般に普及した現代において、新たな技術として注目を浴びている拡張現実(Augmented Reality; AR)をテーマとし、利用目的という視点からの現状分析と将来予測などを通じて、今後の社会においてARがより普及していくための方向性について論じるものである。

本論文では、まず技術的な視点から評価・分類されることの多いAR(拡張現実)について、実際の利用例を参考に利用目的から評価・分類を行い、現在のARの多くが空間もしくは時間を拡張するために用いられていると分析した。次に、ARに対する市場予測をもとに、前述のような空間・時間拡張を目的とした現在のARは今後広告などの商業的な利用傾向を強めていくと予想される一方で、AR自体への興味関心は薄れつつあるという現状を示した。そこで、現状のARの利用方法ではARがやがて社会から飽きられ、利用されなくなってしまうのではないかという問題を提起し、これを打開するためには既存のARにとらわれない新たな利用方法を模索する必要があると考え、以下の三つの利用方法を示した。

(1)AR産業論

既存の現実のものに対して新た価値を創造する

(2)人間自身の拡張

「能力を拡張する」という新たな利用目的のARを活用し、我々の生活を変化させるきっかけとする

(3)ARのエンターテイメント性の活用

ビジネスだけでなく、エンターテイメントに対する利用方法を活かし、ARの普及につなげる

また、(3)において学園祭(一橋祭)という身近なイベントを例として取り上げ、そのような場において現在実現可能なARを考えるため、実際にARを制作・実演した。

そしてこれらのARが実現可能なものであるという根拠として、AR実用化に向けた国内の動きや動画投稿サイトなどのコンテンツ発表の場の存在、そして今後普及が予想されるウェアラブルコンピュータを取り上げると同時に、解決しなければならない課題についての考察を行った。

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