浅川裕太 卒業論文要旨
人類初の人工衛星であるスプートニク1号がソ連によって打ち上げられてからの60年間で宇宙開発の在り方は大きく変化し、民間企業による宇宙ビジネスが盛んに行われるようになった。しかしその一方で、宇宙条約などの法律体系はその当初の形からあまり変わっておらず、現実の宇宙開発とそぐわない側面(法的曖昧性)が徐々に表れてきた。この不一致を是正するための方法を検討することが本論文の目的であり、「発展的解釈を通じた宇宙条約第2条の再検討によって民間企業による小惑星資源の所有は認められるか、また認められる場合他にどのような要件があるか」という問題意識のもと研究を行った。
具体的には、法解釈手法の一つである発展的解釈と呼ばれる手法を用いて宇宙条約第2条の意味内容を再考した。その結果、条文中の一つの単語である ”appropriation” については発展的解釈の余地が認められ、小惑星資源開発に伴う所有状態、専有状態は宇宙条約の他の条文に反しない限りにおいて認められるという結論を得た。また、本論文では発展的解釈に基づく宇宙開発が確実に行われるために必要な開発制度についても言及している。
【宇宙条約第2条】
Outer space, including the moon and other celestial bodies, is not subject to national appropriation by claim of sovereignty, by means of use or occupation, or any other means.