服部晃久 卒業論文要旨
太陽光が人工衛星を照射すると,光のもつエネルギーによって人工衛星に圧力が働く.これは太陽輻射圧と呼ばれ,人工衛星の軌道を乱す要因のうち,重力に依らないものの中では主要な要因の 1 つである.太陽輻射圧によって人工衛星に生じる加速度は,人工衛星の形状と表面での反射の仕方に応じて変化する.
宇宙測地技術解析ソフトウェア c5++ では,太陽輻射圧によって測地衛星に働く加速度を,Cannonball model を用いて計算している.これは人工衛星の形状が真球であり,かつ表面の光学特性が一様に均一であることを仮定している.このモデルでは,人工衛星の表面の光学特性の違いによって生じる加速度の大きさの変化を,太陽輻射圧係数 C_R を用いて表している.C_R は人工衛星ごとに固有の値であり,経験的に得られた値が知られているものの,定量的に C_R の大きさを光学的な観点から説明する試みは少ない.
本研究では,c5++ を用いて軌道決定から推定した C_R と,測地衛星の表面の材質・光学特性から計算した C_R を比較することで,人工衛星ごとに異なる C_R の値に光学的な説明を行った.
その結果,Ajisai の C_R が他の衛星に比べ小さい値となるのは,表面の大部分を鏡で覆われていることで説明できることができた.また,Ajisai の C_R には顕著な半年周の周期的な変化が見られるが,これは現在提唱されているモデルと乖離が生じており,この原因についても検討を行った.