中馬 翔太郎 卒業論文要旨
高等学校の理科科目である地学は、物理、化学、生物の三科目に比して、履修率が長らく低迷してきた。理科基礎科目導入後には地学基礎履修率を3割程度まで伸ばしたものの、発展科目の地学に関しては1%を切るという厳しい状況にある。本論文2章ではこの原因として、第1に教員採用数や授業開講数、入試制度問題などの制度的要因と、第2に指導者・学習者双方の地学不要論により説明される意識的要因があり、両者の相互作用が重大であることが明らかとなった。これに対し、3章では地学を学ぶことの意義について考察し、他科目と異なる独自の教育性を、科学教育における3の価値に地学特有の教育的価値を加えた4価値を根拠として具体化した。終章となる4章においては、高校地学の将来像を「現行制度存続」、「地学の他科目分散」、「地学基礎のみ存続」、「防災科目再編」の計4つ提示し、前章で示した4価値の充足度と制度的要因の解決度に関して現行制度を基準とした評価をそれぞれに付した。この評価を総合的に勘案した結果として、第1に「地学基礎のみ存続」、次いで「地学の他科目分散」および「防災科目再編」に状況改善の可能性を見出し、結論とした。