長澤亮佑 卒業レポート要旨
アポロ11号による月面へのレトロリフレクタ(逆反射鏡)設置をはじめ、これまで複数の探査機が月面にリフレクタを設置してきた。月レーザ測距とは、そのようなリフレクタに向けて地上局からレーザ光を発射し、戻ってくるまでの時間を測定する技術である。
本研究では、月レーザ測距の観測データに対してフィットするような物理モデル、すなわち地上局とリフレクタの間の距離を、任意の時刻に対して与えるアルゴリズムの構築を行った。モデルの構成要素は月の軌道や秤動、地球回転、地球と月の固体潮汐、レーザ光の大気遅延、そして相対論効果などである。レーザ光の片道の伝播距離に対し、数十 cm 以上の影響を与えると予想される要素を、すべてモデルに実装した。
その結果、観測値とモデルの計算値との差(残差, residual)を、片道分にして 20 ± 20 cm 程度まで詰めることができた。ただしこれは事前の見積もりよりも大きな値であり、モデルに何らかの誤差が蓄積している可能性は否定できない。とくに残差をこれ以上小さくするためには、本研究で扱わなかった月の軌道決定および月の回転運動の決定が必要であると考えられる。