高倉慎一朗 卒業論文要旨
衛星レーザ測距(SLR; Satellite Laser Ranging)は、地球上の点と衛星の間の距離を正確に測る技術であり、世界中の観測局のデータを解析することで、衛星の軌道を数cmから数mmの精度で決定することができる。その際、観測局へのフィードバックのため、観測値と軌道決定による理論値との誤差は品質評価速報としてウェブ上に速報されている。一橋大学も解析機関の一つとして、速報及びフィードバックを行っているが、現状、異常なケースの抽出は人の目によって行われている。本研究では、異常な観測誤差を自動的・統計的に検出し、要確認と思われるものをメールで通知するシステムを構築することで、抽出作業の簡素化を実現した。具体的には、一橋大学の品質評価速報から過去20週間のデータを取り、いくつかの条件分岐を用いて最新のファイルについて誤差値を検定するソフトウェアを開発し、それを6時間ごとに起動している。その結果、このシステムではRapidServiceMail(観測局へのフィードバックを記録したメーリングリスト)に報告されている事例のうち80%以上を検出し、また過去に報告されなかった事例をも発見することができた。また、システムを一橋大学における解析作業の一つとして組み込むことができ、フィードバックにおける人的作業を縮小し、かつては見つけることの難しかった観測異常を検出できるようになった。