「エネルギー安全保障に基づく宇宙太陽光発電システム構築の意義と課題」

牧野寛之 卒業論文要旨

東日本大震災以降、原子力発電から火力発電へと転換が進んだ。それに伴い、必要な「量」のエネルギーを、需要可能な「価格」で確保する、日本のエネルギー安全保障は脅かされた状態にある。

本論文では(1)エネルギー自給率、(2)二酸化炭素の排出量、(3)エネルギーの供給量、(4)エネルギー供給の安定性の四つの観点から各種エネルギーの比較を行った。宇宙太陽光発電システムを確立することが、必要な「量」のエネルギーを確保するという面では、日本のエネルギー安全保障に大きく貢献することを示した。

一方で、宇宙太陽光発電システムには課題も数多く存在する。蓄電池の技術が進歩することにより、太陽光発電や風力発電の、安定して電力を供給できない点が解決されること、シェールガス、メタンハイドレート、核融合発電といった新たなエネルギー供給法の確立されること、原子力発電への抵抗の薄れから原子力発電への回帰が起こること、そして宇宙太陽光発電の発電コストが高いことなどが挙げられる。

より安いコストで、より安全な手段により、日本のエネルギー安全保障の問題を解決できるのであれば、敢えて宇宙太陽光発電システムを用いる必要性はない。しかし、現状では太陽光、風力、地熱、水力といった様々なエネルギーそれぞれに課題があり、エネルギー安全保障の問題を解決できる状態にない。ゆえに、宇宙太陽光発電システムの研究、開発を推し進めることには意義がある。

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